発信力のある患者さん

先日手術をさせていただいた顔面痙攣の方が、実は結構有名な方だったことを、今日看護師さんからきいてしまった。
患者さんの業界に詳しい訳ではないが、数年前に著作が話題になっていたのにピンと来たのでwebで調べてみたらbingo...
”もっと早く言ってくれよ!!"という思いがある一方で、手術の内容が変わるわけではないので、それに関してはどうでもいいのだが。

問題は、結構難しいタイプの圧迫血管で、どうしても顔面神経・蝸牛神経周囲での操作が長くなってしまい、術中ABR V波が1.2msecまで延長、12分の休憩を3回挟んでなんとかtranspositionできたのだが、術後125Hz~200Hzにかけて30dB程度まで聴力が落ちてしまった。しかも悪いことに、小脳と下位脳神経がかなり癒着しており、おそらく一過性と思われるが咽喉頭麻痺が出て嗄声と、食べられるが嚥下障害が出てしまった。
後者に関しては弁解の余地はないかもしれないが、聴力低下に関しては、正直この程度で済んで良かったというのが正直なところ。

で、この患者さんだが、いろいろな著作もある発進力のある方で、今回の入院に関してもかなりreal timeにblogにアップされており、退院された後に拝見して愕然。
結構強い顔面痙攣だったが、少なくともブログの上では満足度はかなり低い様子。

時々失念してしまうのだが、医者、特に外科医は手術が上手くいったことを過剰に評価し、合併症を含む周辺事態に関しては評価を軽くしてしまうということ。
もちろん、今回起こしてしまった聴力低下と下位脳神経障害を軽く考えているつもりはないし、大変申し訳ないことをした、他のもっともっと上手な脳外科医が手術していればこんなことにはならなかったのかも知れないと思う。
それでもやはり、難易度の高い圧迫血管をうまく移動することができ、あれだけ引きつれていた顔面痙攣が消えたのだから満足していただけただろう、下位脳神経は大概戻るしという甘えた部分があった。

今回のようにブログなりfacebookなりで、手術の体験記を読ませていただくと、どちらかというとpositiveな評価が多い気がしていたが、今回のようなnegativeな評価の方が、僕のような性格の人間には勉強になっていいのかもしれない。