増大傾向の高齢者の未破裂脳動脈瘤

今日は75歳、外来で経過観察中に増大してきた、中大脳動脈瘤に対してクリッピングを行いました。

最近はご高齢の方こそ、mini-incision&小開頭で短時間で終わるのが良いと考えてますが、ボスの鶴の一声でzigzag incisionに。
小切開と通常切開の差は、結局開頭・閉頭時の出血量の差に尽きると、今は考えてますが、どうしても後者の方が出血量は多くなってしまいます。
今日も閉頭の時が一番出血したと思います。

さて、中身の話ですが、
expert opinion、つまり専門家の意見として、一般に不整形の動脈瘤は出血のリスクが高く、くも膜下出血のリスクが高いといわれています。
これを検証するのはかなり難しく、
1. まずexpertの定義が難しい。手術件数、論文執筆の有無、他薦、自薦etc.
2. 不整形の定義も難しい。そう考えるとblebの定義もよく分かりません。曲率の変化とするならば、CTAなのかDSAなのか?
3. 不整形のものは出血しやすいという言説がある中で、randomizeはできない?
3'. しかもくも膜下出血を起こすと、死んだり、植物症になったりするわけですから。

不整形の動脈瘤も開けてみたら、真っ白で、まったく壁の薄いところのない方も多いわけですが、今日は一部汚いオレンジ色で、壁は薄々。
そして周囲と剝離している際にそのオレンジ部分から出血! 思わず声を出してしまいましたが、blebにクリップをかけ、あとは通常の未破裂瘤の手術に。

このように、全く通常の操作で出血するような瘤は、"やって良かったね-"となるわけで、こういう方がいないと、未破裂脳動脈瘤の手術は本当に役に立っているのかどうか分からなくなります。

さて明日の方はどうでしょうね。