大往生したければ医療と関わるな

今日も、抗血小板薬内服中の意識障害、巨大脳内出血の方が搬送されてきました。
81歳、優位半球出血で、このサイズであればおそらく死に至るであろう、比較的理想的なサイズで、脳卒中科Dr.も"自分だったら手術は勧めません"という説明をされたが、
もともと、前医から手術すれば命は助かるという話をされていたそうで、結局別のチームで手術になりました。

僕も3年目くらいまでは、そういう脳出血で研鑽を積ませていただいたので、結果的に手術になったのは、担当Dr.にとっては良かったのかも知れません。

しかし残るのは、利き手側上下肢麻痺、全失語。年齢を考えるとまず寝たきりです。
家族はそれを分かっているのでしょうか?
もちろん、片側手足が全く動かないし、言葉は全然分からない、しゃべれない、尿便失禁、経管栄養ということは説明しますが、それが具体的に自分の家族に起こった映像が浮かぶ方がどれほどいるでしょう。特に都会で核家族など少数の若い世帯で住んでいると、寝たきり老人なんて目にしませんから。
それよりも、”あのとき、お前らが手術に同意していれば、ばあちゃんはまだ生きとったんや!”とか、後からやって来た親戚にどやされるほうが、よっぽどクリアに想像できます。
なので、一刻を争うシチュエーションでは、取りあえずコスト度外視、予後というか後の世話をどうするかという冷静な判断なしで、できることは何でもやって下さいという家族はあまたいるわけで、若い医者がトレーニングを積む機会(今回は上級医がされたようですが)はまだまだ存在するというわけです。