顔面痙攣の認知度

さすがに神経内科・脳外科医で顔面痙攣を知らない人はいないと思いますが、
外来を受診される方に、いままでのエピソードをうかがうと、医療業界でも意外に認知度が低いことに驚きます。

「目の周りがぴくぴくなる」「顔がぴくぴくする」「目が開けていられなくなる」という場合、多く方はまず眼科を受診されるようです。
また、症状が進んで「顔がひきつる」ようになると内科を受診されたりもしています。

ところが、顔面痙攣が、疲れ目などの際に起こる眼瞼痙攣(まぶたがぴくぴくする)とは違う病気であることを知っている医者は、眼科の医師を含めて意外に少ないようです。

というのも、まず顔面痙攣という病自体がまれです。
頻度としては10万人あたり0.8人(Fukushima et al.)-10人前後(ノルウェー, ドイツ)。

そして、何度も述べているように、基本的に生命に関わる病気ではない、というのも知られていない一因です。
なぜなら、生命に関わる病気は、医学部で必ず勉強します。見逃すと訴訟になったりする可能性があるため、卒業後も医学雑誌などを読んでいて記憶のフックに引っかかってくるわけです。
逆に、生命に関わらない病気は記憶への定着率が悪い、いや、それ以前に限られた試験準備時間でカバーする範囲に入ってこない可能性さえあるのです。

なので、「目の周りがぴくぴくする」といって、眼科に行っても、「よく休めば治る」と言われたりします。
また"命に別状ない疾患であることは知っている"という方も多いのか、「心配ないから、ほうっておいて良い」と言われた方も結構多いです。
命に関わらない病気だから、治療法まで知っている医者は少ない、というわけです。

ま、ほうっておいても良いのですが...
治療法としては、抗てんかん薬(clonazepam), ボツリヌス毒、手術がありますよ。