年齢で手術適応を決めることについて

前回の講演会の話を踏まえてですが、
先月のSTROKE 2016での内頚動脈狭窄症に関する、西の方にある大学病院からの発表をまた思い出しました。

発表内容は、75歳未満は内膜剥離術、80歳以上は血管内手術(ステント)という基準で治療を行っていて、その結果に関しての報告ということでした。

その結果、80歳以上群では、術後のMRIでの新規脳梗塞が40%くらいに起こっていたが、後遺症になるような合併症は少なかった、といった内容で、
その結果を踏まえて、
「われわれの治療方針は妥当である」
というもの。

突っ込み所がいろいろありましたが、

まず、ステント治療で術後のMRIで新規脳梗塞が出るのは概ね20%くらいという報告が多く、この病院では倍の頻度で起こっているということです。

高齢になるほど、病変のある頚動脈に到達するまでの通り道、つまり大動脈や大腿動脈の動脈硬化もつよいため、アクセスが困難になりがちである、ということは常識です。
また狭窄の原因担っている粥腫の性質によっては、ステントによる塞栓症のリスクが大きく変わってきます。

つまり、年齢で区切った治療方針だと、(この場合は80歳以上の方は、)
過剰に治療リスクを負わされてしまうことになります。

大学病院だとある程度、前提条件を付けて調査研究を行うということも必要になるのでしょうが、
年齢で完全に区切ってしまうと、患者さんの利益にならないと思います。


もう一点は、
この結果をもって、われわれの治療方針は妥当である、という結論づけていましたが、
結果が他の病院より悪いのだから、妥当性には疑問がある、という結論でないとおかしいのではないでしょうか?


自分としては、頚動脈狭窄の第一選択は
(もちろん内科治療ですが)
侵襲的な治療が必要な場合には、安定した成績が出せる内膜剥離術だと思っていますが、
ステント治療を考える場合でも、全体像の評価が大事だと再確認したのでした。