まれな部分の動脈瘤

未破裂脳動脈瘤が見つかって、脳神経外科の外来を訪れる方は多いですが、そのほとんどの方は実際には「よくある」動脈瘤です。

なにせ、50歳を過ぎると、およそ3~6%の方に未破裂脳動脈瘤が見つかると言われるので、100人、脳のMRI検査を受ければ3人から6人の方が、
動脈瘤が見つかりました、脳外科医に相談して下さい」
と言われるのです。

動脈瘤は、脳の動脈のいろいろな部分にできますが、できやすい部分は大体決まっていて、70-80%くらいの方が前交通動脈、後交通動脈、中大脳動脈に動脈瘤ができています。
くも膜下出血で運ばれてくる方もこの3箇所からの方が多いですし、未破裂脳動脈瘤を治療せずに観察した研究もこれらの部分のものが多いです。

"よくある場所"にできた動脈瘤に関しては、一応「統計上はこの部分にできている動脈瘤はooくらいの割合で出血すると言われています」という説明が可能ですが、
それ以外の場所に関しては、根拠がだんだん怪しくなってきます。

UCAS Japanという日本人対象の調査でも5.7%がothers、つまり"ある程度の人数がいた部分以外"という形で登録されていますが、詳細は分かりません。
また、治療されずに経過を見られたのか、見つかって3ヶ月以内に治療されたのかも不明です。
(ただ、出血のハザード比(基準の場所に比べた危険性)は1.48と出ています。)

このような場合は、悩ましいのですが、もう経験ベースの歯切れの悪い話になってしまいます。
大きい動脈瘤に関しては、あまり迷うところはないのですが、6mm程度で形がいびつなものなどは、すっきりとした話はなかなかできないのです。

結局「よくある部分」と同じで、面白みのない結論ですが、
治療リスクを評価して、動脈瘤を持っていることについてご本人がどう思われているかを伺いながらすり合わせをしていく、ということしかないでしょう。