くも膜下出血後の水頭症にタップテストは?

特発性正常圧水頭症認知症の原因となる病気で、手術で改善することができる数少ない認知症の一つです。
手術の侵襲もあまり大きくなく、これから手術数が増えていくと考えられている疾患の一つです。

MRIなどで、いくつか条件を満たして、特発性正常圧水頭症が疑われると、タップテストと呼ばれる検査を行います。
これは腰に針を刺して、髄液を20~30ml取り除き、症状が改善するかどうか見るもので、典型的には検査後、歩行が改善したり、受け答えが早くなったりします。
(検査だけで髄液の流れが良くなるのか、症状がなくなってしまう方も稀にいます。)

このテストで症状が良くなる多くの方は、数日経つと髄液がまた貯まってきて、また水頭症になるので、手術で持続的に髄液が脳・脊髄の周りから一定程度抜けるように、シャント手術を行いますか?という流れになります。


一方、くも膜下出血の後にも、5人に1人くらいの頻度で、水頭症を起こします。これは脳から脊髄まで広がった血液のために癒着が起こるため、などと言われています。

くも膜下出血後には、圧が高い水頭症が起こることもありますが、髄液圧が正常な水頭症が起こることがほとんどです。
このくも膜下出血後の正常圧水頭症に対してもタップテストを行って、治療適応を決める施設(病院)があるみたいなのですが、これは(多分)「間違い」です。

うまく説明できてないかもしれませんが、タップテストで排液できる量は少ないので、くも膜下出血後の水頭症の症状は改善しないのだと思います。
なので、「タップテストで症状が改善しないから、シャント手術の適応はありません」、ということになると、せっかく手術や脳血管攣縮を乗り切ったのに、社会復帰の芽を摘んでしまうということになりかねません。

くも膜下出血後の水頭症の場合は、脳室(脳槽)ドレナージが聞いていて、意識の状態が最も良かったときのCT(MRI)と比べて脳室が拡大しているか否かを元に、治療適応を決めることが重要です。

実際に、別の病院で上記のような患者さんがいて、たまたま知り合いの開業医の先生からご紹介いただいて、自宅退院できた方がいたことと、水頭症の手術待ちの間の(姑息的)排液のことをタップテストと呼んでいる医者がいたので、注意のため書いてみました。