気管切開のtechnical tips

気管切開は、脳外科医になって始めのころに経験する手術(処置)です。

東大医局のローテータも、別のプログラムからの方も、私が10年以上前にならったやり方で処置しているので、毎回びっくりするので、ちょっと楽になる方法を書いておきます。

(もしかしたら耳鼻科の先生にも役立つかもしれません。)

それは、2-3開創器です。(+電気メス)

自分もそう習いましたが、
最初にメスで切開を置いた後、
linea albaを確認して、筋鈎に鈍的に
「横横、縦縦」みたいに開創して、甲状腺を出して、
と行うのですが、

きちんとepinephrine入りの麻酔を十分効かせた上で切開を置き、
開創器をかけて、電気メスでSternohyoid m.を露出して、linea albaをなぞるように電気メスで切開します。
鈍的に行うよりも、明らかに展開が良くなりますし、この部分には(ほとんど血管が入っていません)。

ここで、開創器を縦方向にかけ直し、softに開創すると、ほぼ無血的に甲状腺前面を観察することができます。
(力任せに拡げると、当たり前ですが、出血します。)
この手術(処置)で必要なのは、気管の幅だけなので、それ以上拡げる必要はありません。

甲状腺Isthmusを確認し、その下側・及び気管との間にも血管の連絡はないので、優しく甲状腺を頭側に持ち上げて、気管前面を確認します。

あとは切開をフラップを作るなり、切り取るなり、気管孔にするなりして閉創します。

他の病院から来たDr.にやってもらうと、助手が筋鈎で術野を確保するような方法になりますが、
開創器を使うと、助手が要らなくなります。

また、筋鈎で術野を維持するよりも浅く、助手の技量に依らない手技が可能になります。

可能性のある欠点としてはdead spaceが生じて、感染を起こす可能性があることですが、特にsternohyoid m.の奥でスペースを作り過ぎないように留意する必要があるかもしれません。


ベッドサイドで行う場合など、助手は腰痛必発でしたが、それがなくなる(?)だけでも試す価値ありでは。