手術の体位

前職では、聴神経腫瘍や顔面けいれん、三叉神経痛の手術が多かったこともあり、また看護師さんが慣れていたこともあって、側臥位での手術が多かった。

(もちろん数が最も多かったのは仰臥位であるが)

異動するにあたって、手術室スタッフが慣れていないと困るなと思っていたが、幸い杞憂だったようである。
永田先生(もとは福島先生?)式の腋窩枕だけで、下側の腕を吊り下げない方法だが、単に自分が無知だっただけなのだが、呼吸器外科や泌尿器科の側臥位と大きくは変わらず、スタッフにとって目新しくはなかったためだ。

側臥位が優れている点として下のようなことがある。
1.腹圧を逃がせるため、静脈性の出血が抑えられる。
2.同じ理由で、脳圧を下げられる。
3.腹臥位と比べて、体位を取る際の人手が少なくて済む。
4.3.と重なるが、ストレッチャーからベッドという距離の長い移動が不要

1,2には、特に腹部の脂肪が多い方で重要になってくるが、横向きだとおなかの脂肪が横に流れるため、下大静脈が圧迫されないことで、脳圧の上昇を抑えられる。
特に後頭蓋窩の手術では、硬膜が張っていると小脳が切開部分から張り出してきて痛む可能性があるため、圧のコントロールは重要である。

3,4.は、腹臥位ではベッドからベッドの移動、しかもひっくり返しながらの移動は、首の向きが大丈夫かとか、支持器の位置調整がうまくできているかなどの確認が必要になる。
痩せている方でなければ、麻酔がかかって弛緩した身体がすべて体重としてかかってくるため、安全のためには部屋の外から3,4人人を探してこなければならなかったりする。
もちろん脊髄の手術などで慣れてはいるが、制御しなければならない変数が多いことはできるだけ避けたいわけである。

小脳の正中にある病変でも、parkbench position気味にすることで、同様に手術可能であり、小脳出血を含めてオススメである。

一応、危険性を記しておくと、
1. 腹臥位と同じではあるが、急変して心臓マッサージが必要な事態になると、対応できない。(それでも腹臥位よりは素早く起こせると思うが、幸いそういう事態にはめぐりあっていない)

2.腰部の圧迫による大腿のしびれが起こる可能性
これは、痩せているから起こらないという訳ではないようなので、注意が必要である。


頸静脈のスペース確保や、頚部の屈曲などにいろいろコツはあるが、慣れると腹臥位には戻れなくなります。