タングステン メスは有用か

金属としてどのように良いのか、詳しいことはおいておくが、
脳外科医で、タングステン メス(コロラドニードルⓇなど)が好きな人は意外に多い。

NTTや日赤のように、disposableな道具はdisposalbeとして使う病院では、この手の道具はコストを患者さんに請求できないため、いわゆる持ち出しとなってしまう。
それでもメリットがあるならば使うわけであるが、

使う方が安全性が高くなる
出血量が抑えられる
手術時間が短くなる

などの、明かなメリットがあれば使うようにしていると思う。


そこでタングステンメスであるが、個人的にはこの、とんがってよく切れる電気メスは、正直なところあまり好きではない。
確かによく切れるし、適切な出力で使うと出血も抑えられるのだが、果たして皮膚(と皮下組織)以外にそれほどメリットがあるのだろうか。

形成外科の筋皮弁を作るような手術では、一筆書きのように、しゅうっと、デザインに沿って皮膚を切るのに適してるように見える。
しかし、脳外科の手術では、そこまで広範囲な切開を置くことは少ない。
しかも刃の長さが短く、痩せた高齢女性でもない限り、1回では下の層まで切りきれない。

学会ビデオなどを見ると、後頭下筋群などをタングステンメスで骨から剥がしているシーンが出てくるが、筋は骨に面で付着しているので、これを鋭利な細い道具で剥がすというのは理にかなっていないのではないだろうか。


では、何を使うかというと、普通にセットになっている電気メスの鈍な先端(幅3mm程度)が結局使いやすいと思う。
つまり、粘土細工と同じで、ヘラのように面・辺・角を状況に応じて使い分けるのである。

特にCEAのような軟部組織の手術では、電気メスを上手く使うことで、ほぼ無血的な展開が可能になる、というのが、今年1月の手技にこだわる脳外科に出した演題要旨になる訳だ。