タングステンメス その2 火傷に注意

別の病院で手術されたという方が、紹介状を持って来院され、傷の治りが悪いので、経過を見て欲しいということであった。

どこかで見たことのある傷の状態。

詳細を問い合わせていないので、あくまで憶測だが、当該病院の出しているビデオから判断すると、十中八九、電気メスによる熱傷だろう。
で、おそらくタングステンメス。

火傷を起こした傷はなかなか治らないので、時間がかかる。
研修医の3ヶ月目くらいのころ、お腹の傷を10日目くらいに抜糸したら、糖尿病もないのに傷が開いてしまい、縫い直したことがあった。
このときは、手術中にお腹の脂肪を切開するのに使った電気メスが手前の皮膚に当たったせいであった。
それ以来、自分で手術するときはもちろん、若手の術者にも十分注意するようにしている。

タングステンメスは上手く使うと、皮膚からの出血が少なく、重宝するのであるが、電流の出力コントロールと切開のスピードを調整しないと、真皮に熱傷を生じることがある。
かつ、皮膚切開から用いるので、手前がどうこうという問題ではなく、最初から、なめらかな切開をデザインし、手を動かさなければならない。

便利な道具ほど、よくよく"勉強"しておく必要があるということ。