手術の道具の使い方

先日たまたま、森田先生が日本医大の医局員向けに書いた記事を読みましたが、その中に「(手術)道具について」という回があります。


http://nms-neurosurgery.com/?tsubuyaki=道具について

http://nms-neurosurgery.com/?tsubuyaki=道具について②

2回に分かれていて、なんとなく四方山的ではあるものの、第1回は開頭について、第2回は顕微鏡操作についてとなっています。

不肖、弟子なのでそう思うわけですがが、活字で書くなら、われわれが学ぶべきことの99%はこの2ページに集約されているといっても過言ではない、珠玉の内容です。

特に、筋肉の剥離についての部分、
(以下引用)
鋏もそうであるが、使い方で最も差ができるのは、骨から組織を剥離するラスパやジョーカー、コトル等骨膜剥離子といわれる道具である。これらは“骨膜”を剥離するものである。筋肉ではない。一部は筋膜と替えたほうがよいかもしれないが、軟部組織の膜を破らずに剥離することが最重要である。アイスクリームのへらのようにただ軟部組織を引っぱるのではなく骨に固着している組織を剥がすのである。その動作は道具の先に力をこめて(チャクラを込めると筆者はいうが)、手元の柄のところの力は抜くことである。どんな道具もガッチリ握りしめては自由な動作はできないので、軽いタッチで(彼女の手を握るような感覚で?とよく教えてくれた先輩がいたが..)握る。そのうえで道具を離すことなく、力を込めるところには先が効くように力をこめるわけである。その最も良い練習法は豚のリブからお肉を外すことである。それをどのような角度、どのような深さでもできるようになると、当然内耳道周囲やJUGULAR TUBERCLEの硬膜を剥がすことは容易となる。深部で硬く固着した組織をごく近隣の神経を損傷しないように剥がすことができるようになる。(引用終わり)
チャクラはどうかわからないけれどが、先端を意識してそこに力が集中することが大事。

その他も1パラグラフ毎にエッセンスが詰まっています。

あえて追記するなら、セッシを用いた鈍的剝離は、ハサミを用いた鋭的剥離よりも難しいです。
それはハサミは"切る部分を見える様にすること"が全てで、あとは少しずつ切るにしても、一気に切るにしても、on/offになるからです。
一方、鈍的剝離では、調整すべき変数が一気に増えます。まず対象組織がなんなのか、軟膜・軟膜なのか、血管・クモ膜なのか、腫瘍なのか、腫瘍は柔らかいのか、固いのか、道具のバネの強さはどうかなどなど。それによって、開いたり閉じたりする加速度とか力積を変化させる必要がでてきます。

言うはやすく、行うは難しですが、頭で分かってやるのと、そうでないのはやっぱり差がつくと思うので、脳外科の方は覗いてみては。