第18回日本脳神経減圧術学会

先週、仙台で顔面痙攣・三叉神経痛などに関する学会である脳神経減圧術学会があり、参加してきました。

基本的には、それほど新しい内容が出てくる分野ではないと思われますが、それでも40を越す演題が出されていました。
同時開催のてんかん外科学会に参加していた同僚も言っていましたが、
どうせそんなに新しい内容が出てくるわけないのだから、演題を絞って1件あたりの持ち時間を増やすか、全体が早く終わるようにする方がいいのに。
今回も17時を過ぎると空席が目立つようになり、寂しいかぎりでした。

ただ、演題数を減らすと発表があるから参加する、というタイプの参加者が減るため、なかなか難しい部分はあります。


気になった内容(備忘)

1. 顔面痙攣の手術で後頭下の筋群を、それぞれ筋肉の方向に分離・剥離して行っている、という演題が2題も出ていてびっくり!

これに関しては、さすがに会場から、聴神経腫瘍で同様の議論があったが、各層で分けると長期的には後頭下筋群の萎縮が起こるため、止めた方がいいと、全くまともな指摘をされていて、取りあえず安堵した。(後からの演題に関しては聞いていないので不明).

各層を綺麗に分けると、ビデオ映えはするけれど、この手術に関しては、全く本質的でないと思う。


2.椎骨脳底動脈による三叉神経痛の手術
この演題は、技術的にはほぼ確立されているものの、減圧術でも議論がある部分であろう。
基本的には椎骨動脈の近位部から椎骨動脈の可動性を上げていく、ということに尽きると思う。

そこに川越医療センターから「圧迫血管と三叉神経の間にテフロンを置いてくる、手術リスクの低い方法(interposition)で4件治療を行い、全例2年の段階では痛みが起こっていない」という発表。

この発表に対して、interpositionは再発するからダメだよ、という意見が当然出るわけです。
そこで「神経ブロックもガンマナイフもあるので無理する必要はない」という意見が出てくるわけで、これはやはりもっともだと思うのです。
それに対して、「いや、ここは神経減圧術学会だから」と、わざわざマイクを取っていう方がいるのに、またびっくり。

われわれの目的はこの場合、<三叉神経痛を取り除く>であるはずで、その手段が手術であろうと、神経ブロックでもいいんです。
そして、この数少ない確立されていない部分に関しては、ありうる質問、というか要請は
「まだ2年なので、引き続き経過をみて報告してほしい」
じゃないでしょうか?

因みに自験例は少しずつずらして移動させる法ですが、自分の技術と患者さん側のリスクなどをどう評価するかという問題に尽きると思いますし、今回の演者の方が、技術的には会場の大半の方より上手だろうに、という感想です。

3. Soulからの招待演者で、神経減圧術3000例の経験という特別講演
まず、MVDだけ3000件、「飽きない?」と思いますが、すごいです。
でもビデオを見ると、がっかりして、成績を聞いてさらにがっかり、というか「やっぱりね」。
9割顔面痙攣で治癒率92%、三叉神経痛300件弱で、治癒率75%。
会場の多くの方が、やっぱりinterpostionだと治癒率が下がるんだ、ということを再確認したのではないでしょうか。
ビデオに関しては、三井記念病院尼崎先生も、「雑っ」と言っていましたが、MVDであんなに流血があるのは、術後の癒着で再発、ということも考えるとあり得ないと思われます。

4. 顔面痙攣の治癒が遅れる例の特徴
北海道大学からの、この演題は面白かったですが、抗てんかん薬を内服していた方の方が、治りが遅いことが多い、というものでした。

5. 椎骨脳底動脈の蛇行が顔面痙攣の原因になるか
こんな稀な疾患で、生命に関わる病気でもないのに、「あなたは将来顔面痙攣を起こす可能性があります」という情報を調べる意味があるのだろうか。。。


食べ物は満喫しました。