画像読影とAI

人工知能・深層学習に関する話題に接しない日はない。

医療分野でも深層学習が現時点あるいは近い未来に活用される分野はいろいろあると思うが、すぐに思いつくのはCTやMRI読影である。
理由はいくつかあるが、もっとも重要だと思うことは
1. データがデジタルであること
2. そして読影した結果もデジタルデータになっていることである。

元データに対応する結果がデジタルデータとしてあるので、基本的にはこの二つのデータ間の関連を調べればいいということになる。

それに加えて

3. これら2つのデータに加えて、電子カルテの実際の患者データも利用できる。

つまり、放射線科のドクターに怒られるかもしれないが、多くの場合、検査にいたる患者の病歴などの情報はほとんど読影業務に影響しているないように思われ、われわれ側も本当に神経放射線学的読影が欲しいときは、直接電話して背景情報を伝えることが通常である。
おそらく、そのようにしなければ、読影の業務も数をこなせないはずだ。

しかしAIなら、それらの背景情報を参照、タグ付けすることが容易にできる。

しかも、当然コンピュータなら眼精疲労や肩こりにも悩まされず、寝不足で診断能力が落ちることもないのだから、多くの読影医師の仕事を肩代わりできるようになるのではなかろうか。


ただ、そう簡単にはいかないという説も出ているようだ。

Maryland大学のDr. Eiot Siegel という放射線科医が述べたようだが

1. AIのアルゴリズムがBlack Boxであり、なぜ判定したか根拠を人間が説明することができない。放射線科医の読影方法と AIは異なる方法で判定しており、その根拠は人間には極めて理解困難である。

2. 各々のアルゴリズムが本当に人間より優れているか?を判断 するのに時間がかかるし、必ずしも詳細に証明することが難しい。

3. FDA(米国の厚生省にあたる役所)がAIを使ったCADを医療機器として認可するのに時間がかかる。
(慈恵医大 放射線科 中田典生先生のPDFより)


...それって、理由になっている?

読影を依頼している側、もしくは患者さんにとって、読影者のアルゴリズムに興味はなく、結果が正しいかどうかということのみが問われるのでは?
アルゴリズムの優劣なんて、学術的な意味はあっても臨床的な意味はないです。

3. のFDAの認可については、そうかもしれない。
何年か前にJohnson&Johnsonから、麻酔の維持ロボットが出た際に、麻酔科医の反対でボツになったことがありました。
https://www.technologyreview.com/s/601141/automated-anesthesiologist-suffers-a-painful-defeat/

つまり、業界団体のせいで日の目を見ない、ということはありえる。

ただ、周りで放射線科に進んだ人たちは数学・工学に秀でた人が多く、器械にできることは放っておいて、他のことに頭を使う方が社会にとって望ましいのではないだろうか。


ちなみに、外科領域で最初に仕事が減るのは、脳外科の、特に良性腫瘍の手術だろう。
(あと目玉がうまく固定できれば眼科の手術だが、レーシックなどはほとんどロボット手術)