KINEVOの印象 (とExoscopeに関する考察)

先日の脳外科学会総会で、Zeiss社の新型顕微鏡KINEVOについてのlunch-onセミナーで思ったことを備忘的に。

1. Focus lock機能

焦点を維持したまま顕微鏡(鏡筒)を動かせる機能で、腫瘍の手術などで出血点を見たいとき、あるいはどうしても手前の組織が被さってくるときなどに便利かもしれない。

また、brain shiftの影響を考慮しなければ、例えばバイパス手術で同じ画角でICG撮影ができることになるので、吻合前後で比較することができそう。
Zeissには解析装置が付いているので、これで論文が1本は論文ができるな。

2. 焦点距離max 65cm

65cm離して顕微鏡操作をする訳ではなく、他社のexoscopeのような使い方ができ、3Dで画面を見ながら手術ができるとのこと。

Exoscopeは内視鏡と同様、面白いとは思うものの、果たして実用的なのだろうか。

既に自分が古いタイプになってきている証拠かもしれないが、自分にとって手術用顕微鏡はメガネのようなものなので、
1. スムーズにzoom in/outができて、
2. しっかり合焦する
の2点が重要と思ってて、
(3. もちろん録画も、記録を残すということでは重要なのですが)

モニタを見て手術となると、この2点がどうしてもネックになると思う。

もちろんzoom in/outは機械の性能だからどうにでもなるのだが、合焦はそうはいかないと思う。
それは、機械側の問題ではなく、術者側の問題で、つまり老眼で焦点が合いにくくなるということだ。

師匠の堤先生は30代から老眼が入ってきていた、と言っていたが、僕も40前くらいから手術ビデオの焦点が甘いことがしばしばあって、外回りにアラートをお願いするようになった。

モニタで見る手術になると、録画の問題はなくなるが、自分(術者)の合焦に時間がかかるため、おそらく凄く疲れるのではないだろうか。
(その辺りを改善してもらえないと、せっかく技術に磨きがかかってきた外科医を早期に退場させることになるのではなかろうか。)

もう1点、術者が不自然な姿勢で手術を行わなければならない状況を避けられるという例を出していたが、後頭蓋窩の浅い部分の髄膜腫を例に出されても、全然本質的ではない。
つまり、見ている方向と手の入る方向が異なると、精妙な、あるいはとっさの判断が要求される時に、遅れてしまうのでは、という危惧がある。
いわゆる身体性というか、普通の手術で助手が術野に道具を入れるときに、見えている角度が違うと、違和感があるのと同じように、頭の中で処理はできるのだが、それは1ステップ判断の回路が増えているということだと思う。
多分これも、脳を酷使するという点で、結果的に術者の疲労を増すのではないだろうか。

3. ICG録画がHD画質になった。


4. QEVO. 一番見たかった内視鏡への言及はなく、残念。


結論; PENTEROも良い顕微鏡なのだが、このQEVOに50,000,000円(オプション別)というのは、今のところないな。